日本MAB計画委員会議事録 日時:2011年11月15日(火)12:30〜13:30 場所:志賀高原総合会館98ホール会議室 出席者(敬称略):酒井暁子(横国大)朱宮丈晴(日本自然保護協会)鈴木邦雄(横国大)増沢武弘(静岡大)松井淳(奈良教育大)松田裕之(横国大);田中俊徳(北大)前園泰得(福井県勝山市)清水万由子(長野大) 配付資料に基づき、下記の報告及び議論を行なった。 議題1.綾ユネスコエコパークの推薦について 松田:(資料参照しながら綾が推薦された旨の報告)分科会で審議の結果、日本ユネスコ国内委員会としての推薦となり、パリのユネスコ本部で審議されることとなった。地元では大きく報道された。林野庁はプレスリリースのあとWebでも公開。行政もユネスコエコパークに対して雰囲気が変化したようだ。 朱宮:(綾町でも?)保全管理計画を作らなくてはならないという雰囲気がでてきた。地元では、河野主査から第一次案が提出されている。これから、ブラッシュアップしていくので委員会からもご教示いただきたい。 松田:文科省から、(管理計画について)問い合わせがくる可能性はあるか?先日、文科省に行った際に、文科省も気にしていたので、計画をつくるようにと言われる前に準備しておくと良いと思う。 鈴木:素案の段階でもよいから準備しておくとよい。 議題2.9月29日ユネスコ国内委員会MAB分科会会合報告 松田:(資料参照しながら分科会が作成した審査基準の説明)委員会のWebでも公開している。目的の二つ目、“自然環境の保全と人間の営みが持続的に共存している地域を指定すること”は強調するポイントかと思う。既存の4BRでは、移行地域がないので今後つくる。できれば先行地域を作り、日本としても本気で(移行地域を含めたBRに)揃えていくんだという姿勢を世界に出していく必要がある。守るだけでなく、利用する移行地域も含めた計画であることが特徴。(5)組織体制とあるが、現在は組織体制がないので、早急に体制を作る必要がある。 増澤:飛び地に関してはどうか。コアゾーンは必ずしもくっついていない。その点に関しては表記されていない。 松田:世界中みても完全な同心円構造は稀。今回定められた審査基準の趣旨にあっていれば良いということになるだろう。 鈴木:カナダでも飛び地を含むBRは結構ある。 酒井:ゾーニングの変更手続きについて、文科省に問い合わせしているが返事がない。 松田:(パリの本部に)文科省から問い合わせると言っていたが。もう一度確認する。 松井:(5)の4(国内外からの照会への対応)。海外からの照会は大事だと思うが、具体的にどういったことが想定されるのか。外国語の問題はどのようにクリアするのか。 松田:この間は、パリ本部からマドリッド行動計画の評価レポートの問い合わせが来た。計画委員会で素案を作成し、文科省から本部へ提出した。そういう照会に対応できることが必要。 鈴木:例えば、松井さんのところに直接きたら、照会がきたと、文科省にメールで連絡すればよいのでは。 松田:海外との照会対応は文科省を通して行なうことになっている。 酒井:先般のBRの評価レポートについての質問項目は、かなり具体的であった。各BRで窓口がない為、文科省主導で進めた。しかし、各BRの窓口がしっかりあれば、そちらで対応していただき、文科省でまとめられるのでは。 松井:権限の話ではなく、マンパワーや資金はどうするのかとういうこと。文科省からの予算が無い中で、どうするかという知恵が必要になる。 鈴木:地道に獲得を目指すことになる。 朱宮:(BR立候補地は文科省のほうで候補地を選ぶのではなく)基本的には、手をあげたところから審査をしていくのか? 鈴木:難しい。個人的には、綾が決まった段階で。立候補地は、3−4箇所名前が出ている。次の推薦は2年後になるのでは。9月に次の推薦だから、今(11月)出したとして、結論がでるのは5月位(で、来年推薦は難しい)。 松田:審査基準は決められたが、手続き案についてはまだ議論されていない。(申請の)タイムスケジュールは決まっていない。 鈴木:多分、予備登録みたいな話が出てくるだろう。 松田:(タイムスケジュールについては)今年度中に分科会で検討するべき。 朱宮:里山保全を考えている人たちにとってはMABに期待している。ある程度ゾーニングの基準を満たしていれば良いのであれば、里地を応援したいと思っていう人たちにとっては希望になる。クリアしなければならないラインがあるのかどうか知りたい。 松田:環境省としては里山イニシアティブを推進しているので、BR登録を勧めるかはわからない。 朱宮:(里山をBRの枠組みで保全したいとしても)それなりに下地を積み上げていかないと、地元がついていけないだろう。 議題3.第12回EABRN報告 酒井:9月20日〜23日韓国 新安多島海洋生物圏保存地域(BR)で行われた。松田、酒井、井田が参加した。島嶼に設定されたBRで、感想としては、島嶼に限ってみても日本にはここよりもふさわしいところがあると思う。次回EABRNは北朝鮮が第一候補だが、北朝鮮開催の場合には日本は参加が難しい。 議題4.ドイツBR現地調査報告 田中:酒井、松井、若松とレーン現地調査に参加。その後、個人で、第23回MAB-ICCと40周年記念祝賀シンポジウム@ドレスデンに参加。For life and for futureがシンポジウムのトピック。ボコヴァ事務局長が世界遺産は価値を保存するための概念であり、BRは価値を創造する為の概念であると述べたのが印象的であった。つまり、MABは価値を守ると同時に、いかに活用出来るかという観点がある。厳正自然よりも、里山的な、活用されている部分がBRにはある。核心地域(厳正自然)は2%に過ぎず、地域の持続的発展のためにどう活かすのかという印象がある。詳細はInfoMAB36号の記事を見ていただきたい。ドイツでは地域ブランディングに力いれている。世界遺産は頭打ち。里山のような二次的景観をどう守るかはMABであれば機能するのではないかと思う。また、世界的にもBRは広がっているので、日本も打ち出せる力をもっているので、世界を牽引できると思う。 議題5.J-BR-net規約と今後の活動について 松田:登録地だけのネットワークと考えていない。候補地、推薦地などは既存の定義があり、予定地という用語を使うとそれを定義する必要がある。(規約名称に)登録地、予定地と明記する必要もない気がする。単にユネスコエコパークと言っても良いのでは。議論したい。予定地は地域でよいのではないか。第3章(会員資格)は、ユネスコ国内委員も追加したほうが良い。登録地が会員なのではなく、登録地に関わる人達が会員。地元行政、有識者、市民に加わっていただくのが良い。西表以外はそのような方々に参加いただいている。予定地も含めて。ではどの地域が検討している予定地と認めるかは書き方が曖昧。 酒井:知床、只見、南アルプス、対馬、小笠原、西表、やんばるのほかにもいくつか検討されているところがあると聞いている。 松田:文科省も次の推薦を進めたいのだと思われる。地域によって温度差があるが、地元の行政担当者が個人として参加してくれれば、予定地といっても良いと個人的には思う。予算に関しては、自転車操業はやむをえない。パートナーシップ事業だけでなく、3年単位のものがあると楽になる。 酒井:ジオパークは会員から会費を徴収している。ユネスコエコパークも将来的に会費を徴収するのも可能では。 鈴木:ジオパークは民間事業なので取りやすい、しかし、エコパークは、役所が管轄しているのでお金が取りにくい。 松田:年間数百万規模の予算があればより充実した活動ができると思う。 朱宮:どのぐらいの額が必要? 酒井:額に応じてやることが決まってくる。 朱宮:最低必要な額は? 酒井:InforMAB10万円位。特に最低限度というのはない。 松田:「日本ユネスコエコパーク登録地・予定地」から登録地と予定地をとり、地域とする。英語名の ReservesのSを削除(Reserveとする)。 議題6.既存BRの見直しについて 松田:この現状が続くと、カテゴリー変更し、BRネットワークから脱退させられる。2014年までになんとかしないといけない。 田中:support study siteというカテゴリーに移行されてしまう。 松井:(BRネットワーク脱退になるという話を紹介したら)大台ケ原の近畿事務所の人は知らなかった。その後、地元は台風被害で動けない。大台ケ原自然再生会合で次回金曜日に本件について検討する予定。奈良県は関心も知識もなかったが、石川県からコンタクトあったとのこと。 松田:屋久島はその点、行政は反応がない。このままでは、BRネットワーク脱退かもしれない。白山については環境省と石川県から連絡があり、県は何をしたら良いのか知りたがっている。 前園:勝山市ではBRのことを誰も知らなかった。ジオパークでは登録済み。世界遺産に登録しようという話がでたが、既にBRにはいっている。ジオパークがうまくいっているので、観光でもアピールできるからBRもいっしょにやったらいいのではという研究者からのコメントもあった。どういう自治体に属するかで対応の仕方で困る部分があると思う。来年、環境自治体会議があるので(BRに対する)機運が高まっている。今度松田氏を招聘した。市役所は市として、どうしたらいいのかを聞きたい。 松田:国際的な登録地という仕組みでいかに地域振興ができるかという事例になるかもしれない。 議題7. 新規BRの検討状況について 増沢:南アルプスでは、BRの登録検討委員会を作った。世界遺産も視野に入れているので、各3県にてゾーネイションをやろうとしているが、事務手続きが大変。大きいだけに、手続きに時間とお金を消費する。 酒井:只見町が進んでいる。町が予算をつけて正式にやるかどうか検討中である。登録手続きに戻るが、重要なのは関係者の熱意。内容的には申請書を作成する段階にきているなら十分クリア出来ている気がする。自治体は申請書を書くことに大きな労力をかけることになるので、予備登録として保留のような形になるのは熱意に影響しそうに思う。 鈴木:予備登録というのは、ユネスコ国内委員会で登録推薦する半年前の段階で、国内で審査する段階のことを意味する。綾町の例のように、パリ本部への締切間際にいきなり推薦するかどうか決めるのは、今回にかぎるかもしれない。 酒井:(綾の例で言えば)3月に(文科省に)提出した段階で予備登録という感じ?それなら良いと思う。 増沢:いくつか地元に説明している地域があるが、もう少し待っていて欲しい. 以上